すれ違う指先

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「おい…!どうして蓮がここにいるんだよ……お前は長州側の人間だろ?」 今度は大柄の男が刀を構えてそう言葉を吐き捨てる。 「私の事を知っているのですか」 私はこの男に会ったことはない。 私は長州で暮らしてはいたが、私が面識のあるものなどほとんどいないのだ。 「知っているも何も、お前は吉田し──」 ──ザシュ 男の言葉は続かなかった。 男の言葉が稔麿を指していないこともわかっていた。わかっていたのだ。 しかし、吉田というその名前を耳にしただけで、気づけば己が刀で男を貫いていた。 男に突き刺さった刀を引き抜くと、鮮血が辺りに飛び散った。 月明かりに照らされて輝く血飛沫を、私は無表情に見つめていた。 逃げ出そうとする残りの二人も切り捨てると、全身を返り血で真っ赤に染めて私はただ佇んでいた。 「鈴璃……真っ赤だわ」 私の声は誰にも届く事なく、何だか妙に明るい夜空に消えていく。 真っ赤に染まっている両手と刀があの時の夢を思い出す。 今の私の姿が、何だか私そのものを見ているようでとても醜かった。 「終わりましたよ」 私は総司に冷たくそう呟いた。 ─私は…… 「蓮…」 総司に少し遠慮気味に名前を呟かれた。少し悲しそうな顔をして総司が駆け寄ってきた。 私は総司を見れなかった。 そして醜い私をその瞳に写さないでほしい。そう思った。 それなのに総司は私をきつく抱き締める。その衝撃に、私は身を固くしながらも握っていた刀がカシャンと音をたてて落ちた。 .
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