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屯所に帰ってから、土方さんに呼ばれたのは総司だけだった。
人を斬って疲れているはずなのに、蓮は何故かやけに目が冴えていた。
蓮は一人静かに縁側に腰を降ろして月を見つめる。
血に濡れたままただ月だけを見つめた。
乾いた血が少しだけ不快だったが、今はどうでもよかった。
人を斬った後はいつもこうだ。
何故か気持ちが冴えていて、どこか違う場所に隔離されたような感覚に陥る。
「ねえ鈴璃、私が斬ったあの人たちにも…大切な人がいたのかな」
そう口を開いてはっとする。
私は何を言っていたのだろうか……?
「嘘……言ってみたかっただけ。
私は決して自分の役目から逃げたりなんてしません。
もう二度と一族を裏切った罪に染まりたくない」
私が呟いた言葉は、余りにも悲しげに響いた。
悲しみを帯びた声音は、冷たい闇夜へと同化していく。
私の言葉は、そのまま自分を映していたのだろうか?
再び口にしたその決意は、自分に言い聞かせている様にしか聞こえなかった。
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