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何処か上の空で廊下を進んでいた総司だが、やがて土方さんの部屋へと辿り着く。
総司は一度深呼吸をすると、落ち着いた声音で口を開いた。
「…土方さん」
「総司か、入れ」
土方さんの返事は相変わらず冷たい。
何時もと変わらない意志の強い声で返してくる。
総司は一拍置くと、襖を開いた。
襖を開く乾いた音だけが辺りにこだまする。
静寂に包まれている空間に、それは小気味よく響いた。
総司は土方さんの部屋へ入ると、適当な場所に腰を降ろした。
蝋燭に照らされて映る土方さんの表情は硬く、口は一文字に引き結んでいた。
総司もただ黙ったまま、切ない表情を浮かべ土方さんを見つめる。
沈黙が部屋一帯を埋めつくし、辺りが静寂で満たされる。
何の音も聞こえる事なく、静けさだけが支配していた。
そんな沈黙の中、痺れを切らして口を開いたのは土方さんの方だった。
「おい、総司……」
そうやって話を切り出した土方さんに、総司は少しだけ表情を引き締めた。
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