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「蓮が長州と手を組んでいる様には、私には見えませんでした。
……相手の男が吉田と口にしたとき、彼女は明らかに怒ったんです」
総司の言葉に土方さんは驚いたように目を見開いた。
「まっ、待て…総司。怒っただと?あいつがか?」
「はい。蓮は明らかに怒りを感じていました。
蓮は吉田に強い怒りの様なものを抱えているようでした……
土方さん、報告はこれで以上です」
そう言って総司は話を区切る。
俯けていた顔を、そっと土方さんへと戻した。
「あぁ、ご苦労だった」
土方さんはそんな一言で口を閉じる。
しかし、話はまだ終わっていない様で、総司から視線を外さなかった。
総司は不思議そうに首を傾げる。
何か言い残した事があっただろうか……
そうやって思考を巡らせ、総司はあることに気づいた。
「そういえば彼女、短刀を仕込んでいました。あれだけの剣術を持っていながらも、蓮に短刀は必要なのでしょうか…」
「蓮が短刀を持っているのがそんなに不自然か?
俺が効きたいのはそこじゃねえ。
総司は蓮と喧嘩でもしたのか」
全く検討違いの言葉が返ってきて、総司は目を丸くする。
しかし、その表情も、直ぐに悲しそうな笑みへと変わった。
「いえ、短刀は戦いにくいですから……
って答えてほしいのは此処ではないですよね。
喧嘩をしたわけではありません。ただ、時を共に過ごすたびに、蓮は離れていっている様に思います」
総司は土方さんにそう答える。
総司の言葉に、土方さんは呆れたように溜め息を吐いた。
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