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「そんなに溜め息を吐かなくてもいいじゃないですか。
聞いてきたのは土方さんなんですよ」
総司は唇を尖らせて、拗ねたように土方さんに非難を浴びせる。
「そう拗ねるな総司。
蓮の事は総司に任せている。頼んだぞ」
そう言葉にする土方さんの表情はやわらかい。蓮が間者であるということを、もう疑ってはいないように思えた。
「蓮の監視は……まだ続けるつもりなんですか?」
恐る恐るの問いかけに土方さんは短く、ああと答えた。
「そう…ですか……」
自分で放った言葉は、あまりにも小さく土方さんに届いたのだろうか。
何故だか今の自分には、蓮の監視をするのは荷が重かった。
「監視の仕方は総司に任せる。
総司、蓮はしっかり見張っていないと死に急ぐぞ」
「蓮は、いつも私とは逆の方向を向いています。何処か笑った顔もいつも悲しそうで……だけど私は、蓮が新撰組にとって邪魔ではないのなら、蓮に死んでほしくはありません」
真っ直ぐと、土方さんをみつめて総司はそう言った。
心は何処か晴れやかで、もう総司の瞳に迷いなどなかった。
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