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「なにを恥ずかしがっているの?」
そんな少女に追い打ちをかけるように、僕はその白くて小さな耳にそう囁きかけた。
「こうなることぐらい、予測できたでしょう。
…僕達は、夫婦になったんだからね」
その途端、少女はすばやく耳を手で覆い、振り返った。
彼女が急に動いたことで、彼女からしていた花のような甘い香りが、一層強くなった。
…ああ、酔ってしまいそうだ。
そんな僕の気持ちに気がついたのだろうか?
彼女はまた、先程のように慌てて僕に背を向けた。
その慌てようが予想以上で、僕は思わず笑ってしまった。
「…かわいいね」
少女の純白の打掛けをそっと床に落とした。
小さな背中だ。
僕はその小さな背中を抱きしめた。
びくりと彼女の体が震える。
「…あ、あの、宮さま…っ?」
小さな、消えてしまいそうな、でも可愛らしい声だった。
「違うでしょ、僕の名は“戴輝”だよ」
「た、たいき、さま…」
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