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暖かな春の日差しの中、わたしはふと、微笑んだ。
戴輝(たいき)、わたしの声が聞こえるか?
わたしたちはなんとか、大切なものを失った悲しみから立ち直れたよ。
今、都には春が訪れている。
おまえの好きだった季節だな。
あれから、もう5年も経つんだ。
…早いだろう?
あの頃のことが懐かしくてたまらないよ。
あの頃は幸せだった。
今と同じように、大変なこともたくさんあったけれど、4人がちゃんと、そろっていたから。
もう二度と戻れない、あの頃。
まだお互い愛するものと出逢う前の、子供だったあの頃。
桜散るあの日、共に19歳の誕生日を迎えたあの日から。
わたしは少しの希望にすがり、大きな不安を抱えながらおまえとともに生きていた。
あれももう、ずいぶん昔のことになるのだな――…
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