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「大丈夫ですか、姉上。 少し飲みすぎなのでは?」 それは、美しい春の夜のことだった。 御所の一番高い部屋の縁側に腰掛け、一組の男女が杯を交わしていた。 それは、美しい女と男だった。 性別こそ違えど、よく似通った顔立ちをしていた。 白く透きとおる肌、艶やかな黒髪、黒曜石のように濡れた瞳。 すっと通った鼻梁、薄く色づいた、厚めの唇。 美しい男女の対に、きっと誰もが見惚れるであろう。 そんなふたりは今、こうして髪を整え、豪奢な服を着て、とある一行を待っていた。 「…えぇい、やかましい。 今、わたしはどうしようもなく昂ぶっているのだ」   今日はなんて素晴らしい日なのだろう。 19歳の誕生日と共に、ふたりは連れ添いを得、大人になる。 今ふたりが待っているのは、ふたりの父を殺した仇の息子と娘。 そして、これから夫婦の契りを交わす相手だ。 謀反人になり損ねた、蓮(はす)の棟梁の子供たち。
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