2

16/35
前へ
/295ページ
次へ
*** 『おとうさま…』   それは、遠いとおい記憶。   母が死んだその日。 父は母の死に顔を見にこようともしなかった。   次の日。 泣きわめくあたしを侍女が必死になだめている間、父は一度もあたしのもとを訪れなかった。   葬儀の日。 父は正室であった母の葬儀を開こうともしてくれず、母の故郷の親族が開いてくれた。   次の日。 後処理に急き立てられながら、父の訪れを待った。   その次の日。 あたしは訪れてくれない父にあて、自ら手紙を送った。   また次の日。 父からの返事はなかった。   次も、次の日も。 そのまた次の日も父からの便りはなく、痺れを切らしたあたしは、自ら父のもとを訪れた。  
/295ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加