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父の言葉からは、父が母のことをなんとも思っていなかったことがうかがえた。
あたしはもうそれ以上なにも言えず、侍女にひきずられるまま部屋から出て行った。
父は、それ以来あたしに会おうともしなかった。
あたしは悲しかった。
捨てられたのだと思った。
父はあたしのことなど愛していなかった。
母のことなど愛してなかった。
あの人の目に映るのは、この蓮のことだけ。
父は力を手に入れるために母を利用しただけなのだ。
それを知ったのは、母の死から数か月たった日のことだった。
その日、あたしはすべてをあきらめた。
いい子にしていたら、いつか父はあたしのことを見てくれるかもしれない。
愛してくれるかもしれない。
そんな希望を捨てた。
あたしはすべてをあきらめ、邸の片隅でひっそりと生きてきた。
それでも、弱いあたしには、父を憎むことさえできなかった。
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