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そんな父に呼び出された時は、喜びなど生まれなかった。 ただ不安で胸がいっぱいになった。 父はあたしを疎んでいた。 “外の国の血を引く忌児よ”と、何度も罵られた。 あたしがほかの兄姉妹弟にいじめられているのを見かけても、父は彼らを咎めようとはしなかった。 あたしの泣き顔を見ると、父は露骨に嫌そうな顔をし、“うるさい”と何度も叫ばれた。 その声がまた怖くて、あたしが泣き出して堂々巡り。   あたしは、父が嫌いで、父もきっと、あたしを嫌っていた。   そんな父からこの縁談と、とある計画を持ち出された。   母もなく、頼れる親族もない。 まして心から愛し、愛され、あたしをあの暗い屋敷から盗み出してくれる殿方などいるはずもなかった。   あたしには、父の命令を断る力なんてなかったのだ。   あたしは、父におとなしく従うしかなかった。   たとえ、あの方を裏切っていたとしても――
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