1

4/36

42人が本棚に入れています
本棚に追加
/295ページ
「…戴輝(たいき)、来たぞ」 ふっと笑い、女は言い放った。 その艶めかしい言い方には見とれてしまう。 男は女の言葉に驚き、立ち上がった。 女の隣に腰掛け下を見遣る。 そこには、美しい一行があった。 もはや最後尾はわからない。 やがて先駆けが過ぎると、大きなふたつの籠が現れた。 あれがおそらく、ふたりの連れ添いになる者たちだ。 「来るなら来い。 …あいつら、ずたずたに壊してやる」   赤い唇を歪め笑う姿は、「戦姫」・夢梨春乃(ゆめなしはるの)にこそふさわしい。   あれは、憎き仇。 ふたりで決めた。 この国を守るためにも、そして父の仇を取るためにも、いつか蓮を滅ぼす、と。 ふたりは立ち上がり、それぞれ違う部屋へと向かった。
/295ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加