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「…戴輝(たいき)、来たぞ」
ふっと笑い、女は言い放った。
その艶めかしい言い方には見とれてしまう。
男は女の言葉に驚き、立ち上がった。
女の隣に腰掛け下を見遣る。
そこには、美しい一行があった。
もはや最後尾はわからない。
やがて先駆けが過ぎると、大きなふたつの籠が現れた。
あれがおそらく、ふたりの連れ添いになる者たちだ。
「来るなら来い。
…あいつら、ずたずたに壊してやる」
赤い唇を歪め笑う姿は、「戦姫」・夢梨春乃(ゆめなしはるの)にこそふさわしい。
あれは、憎き仇。
ふたりで決めた。
この国を守るためにも、そして父の仇を取るためにも、いつか蓮を滅ぼす、と。
ふたりは立ち上がり、それぞれ違う部屋へと向かった。
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