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こういうことが起こることは予測していた。
やっと尻尾を見せたか女狐め!
わたしはその夜、一室に戴輝、奏多、優華とかいう女を呼び寄せた。
それぞれ何の目的で呼ばれたかはわかっていただろう。
特に優華などは、顔がこわばり、今にも泣きだしそうだ。
わたしはその女の顔になんともいえない気分を味わいつつ口を開いた。
「呼ばれた意味はわかっているだろう。
先程貴様の侍女から、このようなものが見つかった」
わたしはそう言って、もっていた数枚の紙を床にたたきつけた。
その音を聞いて、優華の肩がびくりと震えた。
女は震えながら寄り添う戴輝の着物の袖を掴んだ。
そのようなところが一層気に食わぬ。
そうやって今までも戴輝に媚を売り、信頼を勝ち取ったというのか。なんともおそろしい女だ。
「隠し通路のことなども書かれていてな。
これは、関係者にしかわかるまい。
たとえば、そう――ここに、住んでいる者など」
わたしは追い打ちをかけるように女に向って微笑みかけた。
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