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***   侍女の名はさきといった。 俺がはじめて優華に会ったときから彼女の世話をしていた女だ。 優華の母、真理亜(まりあ)がこの国に嫁いできたとき、壊れかけた小舟に乗りすやすやと眠る少女を見つけた。 少女は商船に乗っていたのだが、海賊に襲われ、家族や仲間を殺されたのだと言った。 彼女の両親は、命がけで彼女を守ってくれたのだそうだ。 襲われたことが夜中だったこともあってか、彼女はこうして無事に生き残ることができた。   そんな少女を哀れに思い、真理亜さまは彼女を自分つきの侍女として引き取った。   そういった経緯もあり、さきは真理亜さまのことを心から慕っておられた。 真理亜さまが亡くなられた後、頼るもののない優華のことを、姉のように、時に母のように、愛情を注いできた者こそさき自身だった。   そんなさきが自ら命を絶った。   そのことは、優華にとって大きな衝撃だったようだ。
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