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侍女の名はさきといった。
俺がはじめて優華に会ったときから彼女の世話をしていた女だ。
優華の母、真理亜(まりあ)がこの国に嫁いできたとき、壊れかけた小舟に乗りすやすやと眠る少女を見つけた。
少女は商船に乗っていたのだが、海賊に襲われ、家族や仲間を殺されたのだと言った。
彼女の両親は、命がけで彼女を守ってくれたのだそうだ。
襲われたことが夜中だったこともあってか、彼女はこうして無事に生き残ることができた。
そんな少女を哀れに思い、真理亜さまは彼女を自分つきの侍女として引き取った。
そういった経緯もあり、さきは真理亜さまのことを心から慕っておられた。
真理亜さまが亡くなられた後、頼るもののない優華のことを、姉のように、時に母のように、愛情を注いできた者こそさき自身だった。
そんなさきが自ら命を絶った。
そのことは、優華にとって大きな衝撃だったようだ。
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