42人が本棚に入れています
本棚に追加
/295ページ
「優華…ッ?」
隣で男の慌てた声がして、見ると、優華が戴輝さまの腕を握ったまま、うつむいていた。
体が小刻みに震えている。
戴輝さまが、助けを求めるようにこちらを見た。
だが、俺になにかをしてやるつもりはない。
さきは、優華をかばって死んだのだ。
俺には分かっていた。
父は、おそらく優華にも俺にしたような命令をしたのだ。
父は、俺に夢梨家の弱みを握ってくるよう言った。
彼らの権威をどん底に突き落とすような話を欲しがっていた。
俺はそれを適当にあしらってここにやってきたが、優華にはそれができなかったようだ。
さしずめ、優華は城の構造を把握するよう命じられていたのだろう。
優華は父のことを恐れていた。
昔から、父は抑圧的な態度で優華に接してきた。
父は俺達のような役に立たない子供のことを普段は気にもかけず、必要な時は駒のように扱った。
あの男は、自分の役に立たない者の死に心を痛めず、自分の目的のためならその者の命を奪うことさえ厭わなかった。
最初のコメントを投稿しよう!