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「優華…」
意識の朦朧とする優華をなんとか寝室まで運んだ僕は、彼女をそっと布団に横たえながらその滑らかな頬に流れる涙をぬぐった。
彼女は、血の気のない真っ白な顔のまま静かに涙を流していた。
「大丈夫…?」
そんな姿が痛々しくて、僕はそう問いかけた。
彼女にとって、今回の騒動はどれだけのものだったのだろう。
僕にはわからない。
はじめ自分が疑われ、そして、その疑いは侍女の死によって晴れた。
さきという侍女のことは知っていた。
いつも優華のそばに控えていた静かな女性だ。
他の侍女よりも、優華は彼女のことを信頼し、彼女も優華のことを大事に思っているように感じた。
そんな侍女が、自分のために死んだら、どんな気持ちになるのだろう?
僕は、彼女が僕のことを裏切っているのを知っていた。
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