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俺はその次の日、昼過ぎに妹のもとを訪れた。
昨日のことがあってか、泣きつかれ、つい先ほどまで眠っていたのだという。
まだ寝室にいるらしく、俺はそれはどうかと思いひるんだのだが、優華が気にしないでくれというので素直にその言葉に従った。
気だるそうに起き上がった優華は、いつもの彼女とは違い、どこか翳りを帯びていた。
「優華」
名前を呼ぶと、彼女は静かな瞳を俺に向けた。
俺は、彼女のその瞳を見たことがあった。
それは、もう10年以上前の話。
優華の母である真理亜さまが亡くなられてすぐに、俺は優華を知った。
あの頃の彼女は、ちょうど今と同じ瞳をしていた。
俺は、母親を失ったことでますます他の兄姉妹弟からひどい扱いを受けるようになった彼女を守ろうとした。
彼女に昔の俺を重ねたのだ。
優華は、昔の俺だった。
優華と俺は、よく似ていた。
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