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そんな、激動の時代。   夢梨家には運命の双子がいた。   姉の名は春乃(はるの)。 剣から弓、長刀――あらゆる武術に秀で、御所付きの兵士でも敵わないと有名な、戦姫である。 突然の父帝の死により、昨年の冬、春龍女帝(はるたつじょてい)として即位。 混乱の中、国を導いたその人である。 美しく志高い、そんな彼女を人々は女神と仰いだ。   そんな彼女の陰には、いつもひとりの青年がいた。 青年の名は戴輝といった。 双子の片割れである。 文武両道。 春龍女帝に敵うのは、先帝と、弟宮だけだ、そう言われるほどの腕前である。 そして、大学寮の講師と弁論を繰り広げうる知識量には、宮廷の者は誰一人として敵わない。   では、なぜそのように頼もしく、しかも男である弟宮が即位しなかったのか。   そこには、悲しい秘密があったのだ――…
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