42人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな、激動の時代。
夢梨家には運命の双子がいた。
姉の名は春乃(はるの)。
剣から弓、長刀――あらゆる武術に秀で、御所付きの兵士でも敵わないと有名な、戦姫である。
突然の父帝の死により、昨年の冬、春龍女帝(はるたつじょてい)として即位。
混乱の中、国を導いたその人である。
美しく志高い、そんな彼女を人々は女神と仰いだ。
そんな彼女の陰には、いつもひとりの青年がいた。
青年の名は戴輝といった。
双子の片割れである。
文武両道。
春龍女帝に敵うのは、先帝と、弟宮だけだ、そう言われるほどの腕前である。
そして、大学寮の講師と弁論を繰り広げうる知識量には、宮廷の者は誰一人として敵わない。
では、なぜそのように頼もしく、しかも男である弟宮が即位しなかったのか。
そこには、悲しい秘密があったのだ――…
最初のコメントを投稿しよう!