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後で必ず追いつく、と残り追撃を食い止めた仲間達は永遠に来ることは無いだろう。
先ほどの戦いで自らの命と引き換えに、それも俺を守るために消滅した者もいた。
魔王城の天井は大きな穴が空いていた。それほどの攻撃を俺を守るために一人で受けてくれたのだ。
守りたかったものはもうすべてなくなった。
故郷も、家族も、友も、仲間も、愛する人も……全てを失った。
喜びも達成感もなにも無い。
あるのはただただ悲しみと虚しさのみ。
唯一残っていた復讐という力もなくなった。
体中の傷は深く深刻なものばかりで放置すれば命を奪う傷だ。
だが、もうそんなことは、どうでも良くなった。
吠えた。後悔をどこにぶつければいいのか、わからなくて。
天井からはでかい穴から雨が降りはじめた。
英雄の体は、ずぶ濡れだった。
濡れたのは雨だけのせいではなかった。
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