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吸い込まれそうな闇だった。
いくら進んでも終わりがない。
そこに光など有りはしなかった。
ただ、怖くはなかった。
姿も形も分からない。
そんなのが魔力の中に潜んでいるなんて……アキラ、あんたは一体……
お湯の中から顔を上げる。
アキラの羽。
透明な羽。
なんの色もない。
あたしのは青白くって先端が淡い黄色。
これも何か意味があるのかしらね。
分からないことだらけね。
吐き捨てるように言って風呂を出た。
☆アルスが風呂に入った後☆
「ほんっとーに最近はいろんな事が起こるなぁ。」
俺は他人事の用に呟いた。
母さんや父さんが帰ってきたみたいだった。
嬉しかった。
楽しかった。
けど、寂しくもあった。
(子供の頃は、空を飛んでみたい!とか言ってたなぁ)
☆☆☆
「ねぇ!俺さ、空を飛んでみたい!」
輝く目で話す。
「へぇ、空を飛びたい、かぁ。俺も飛んでみたいねぇ。」
面白そうに返す父さん。
「確かにいいかもねぇ。お母さんも飛んでみたいわぁ~。」
笑顔で話す母さん。
「じゃあ次の研究は人が空を飛べるようにすることだな!」
「この子も喜ぶわね~。」
「頑張ってね!お父さんお母さん!」
だが、行っていた研究、【水と電気、およびガスの生成】は、試作器を残して中止された。
両親が突然行方不明になったからである。
制作途中だった完成器と共に。
よって【人が空を飛ぶ】研究は行われなかった。
☆☆☆
(俺、飛べるようになるよ。父さんと母さんが出来なかったこと、俺が出来るようになるよ。)
もしかしたらまだ研究してるかも………
余計に頑張らなくちゃな、と思っていると
「なーに真剣な顔してんのよ。」
「そんな顔してたか?」
してたしてた、とアルス。
「にしても脱衣所に置いてあったこの服、サイズぴったしなんだけど。アキラのじゃないよね?」
ああ、それか。
「母さんのだよ。中学生の頃のだけどぴったしなら良かった。」
「よく残ってるものね、結構綺麗だし。」
「母さんが、我が家はエコの家!とか言っててさ、服は大切にしなさいとか色々言ってたからな。さすが言うだけはあるだろ。」
その後も他愛ない会話が続いた。
ちなみに俺はちゃんと風呂に入った。
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