プロローグ 11月5日(月曜日)

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俺は教室を見回した。横8×縦5と規則的に並ぶ、脚がパイプ管で出来た机と椅子。 美化委員の子が持ってきてくれた淡い紫の花(名前は分からない)が、教卓の上に置かれた純白の花瓶から顔を覗かせている。 窓際にある白いカーテンは夕日に透け、暖かなオレンジ色をしていた。 二年生へと進級して、気がつけば既に半年以上が経っている。 この教室の景色には見慣れたが、時の速さにはいつになっても慣れることは出来ない。 こんな調子では、高校を卒業してしまうのもあっという間だろう。 「全く、何考えてるんだか」 思わず、そう自嘲した。赤西翔(アカニシカケル)ともあろう者が、放課後の教室でこんなにもしみったれたことを考えてしまうとは。 秋の夕暮れを見たせいで、感傷的になってしまったらしい。 我ながら可笑しいと呆れてしまう。 だがそれ以上に呆れてしまうのは、ホウキを片手に一人、教室の掃除をしているということだ。
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