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ジト目から一転、楓は写真をじっと見ると、
「こんな頃もあったのね」
「今からだと予想も出来ないな」
「そうね。父さんの事を引きずっていたから、気が付いたから今みたいになっていたの」
そう言う楓はどこか寂しげだった。彩未さんが言ったように、楓はパパっ子だったらしい。
その死が事故だろうが鬱だろうが、どんな原因であれ、ショックでないわけがない。
「どんな父親だったんだ?」
ふと、気になってしまった。楓の生き方を変えた人物が、一体どんな人なのか。
いささか踏みいり過ぎた質問か。そう思ったが、楓は素直に答えてくれた。
「真面目で律儀で裏表のない、ビックリするほど正直な人だったわ。それによく笑う人だった。その持ち前の笑顔も、病気の前には屈したのだけど」
「・・・・・・」
「その写真を見ると、改めて昔を思い出す。私には分からなかった。あの父さんが、どうして死んだのか。父さんは形のない何かに殺されたような、そんな気がしたの。そう思い始めてから、私は色メガネをかけていたのね。何をされるにも、その裏に何かあるんじゃないかと疑ってしまうようになった」
淡々とした口調。告白というよりは、まるで学校のラジオ放送みたいに、決められた言葉を話すだけのよう。
だがその口調が、少し緩んだ。
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