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「けど、もう疲れたわ。粗を探そうと、神経を研ぎ澄ますのは」
そう言う楓は、口元に笑みさえ浮かべていた。
それは写真でみたそれと変わらない、自然体な笑み。
「それがどんなに善意な行動であっても、そこには必ず裏がある。ほとんどの人が、無意識のうちに行っているだけ。友達作りは自分の快楽のため。ボランティアなら、貢献したという優越感に浸れる。無償の愛なんて嘘っぱちだけど、それがないと世界は回らない。これからはもう少し気楽に考えるように・・・・・どうしたの?」
楓があまりにも不思議そうに訪ねてくる。
「いや、笑ってるなと思って」
「笑ってる?」
どうやら無意識のうちだったらしい。言うが早いが、楓は無表情に戻っていた。ええい、ポーカーフェイスめ!!
「もう少し耐えてくれると良かったんだが・・・・・」
「そんなこと言われても」
奇跡は二度起きないから奇跡と呼ぶ。
もったいないが、この際贅沢は言うまい。
メガネさえかけてもらえれば十分だ。
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