プロローグ 11月5日(月曜日)

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「あと、空き缶ぐらい手で捨てようよ。その方が早いじゃん」 「掃除してるのは俺なんだし、別にいいだろ。遊び心が疼いたんだ」 マサは背がスラリと高く、顔も綺麗に整っており、ただでさえ知的な印象だというのに、メガネが合わさると相乗効果で、二乗にも三乗にもインテリに見える。 が、今はそんなことはどうでもいい。 マサが博識で、運動出来て、イケメンで、しかもインテリメガネでメチャクチャモテていることも、今はどうだっていい。 知りたいのは、何故俺一人だけ掃除などという罰を受けているかということだけだ。 マサの言うあんなことに、全く思い当たる節がない。 恭子先生とは俺たちF組の担任の名前だ。 美人でスーツ姿がよく似合い、受け持つ国語の授業も分かりやすい。 性格も優しく穏和で、学校全体で評判のいい先生だ。 あの人が担任と決まった日には、クラス替えでまだ見知らぬ男子たちとハイタッチを交わすぐらい仲がよくなるほどだ。 きっと世界中の女の子が美人だったなら、世界は平和だっただろうと、本気で思った日だ。
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