a rusty kwife

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no.1 the begin memories 「ん? 何?」 大陸の中心地「レイドル」大きな街の隅っこの、バーの中でコーヒーに見えるコーラを飲んでいた少女が、肩を叩かれ後ろを振り返る。 その視線の先には、いかにも醜悪そうな男が5人、ニヤニヤしながら立っていた。先ほどまで、賑わっていたバーは、シンと静まり、少女と男たちを生唾を飲み込みながら交互に見ている。 「嬢ちゃ~ん、俺らは、今一文無しなのねえ~?」 中でもひょろっとした奴が、気色の悪い顔で、そう切り出した。少女は、へえ…と、興味なさげに、コーラを飲む。 「…そんで?」 口元をぬぐってから、男に尋ねる。綺麗な碧緑色のかみが、サラリと揺れた。男たちは、ますます気色の悪い笑みを浮かべて、一歩、少女に近づく。 「金、今持ってんの全部かしてくんないかなあ~?」 返すつもりもないくせにと客たちは叫びたかった。 よりによっても、あんな少女にたからなくても、というように。言いたかった。 「なんで?」 「「なっ!?」」 その言葉に、男たちもほかの客たちも息をのんだ。神秘的に輝く、彼女の瑠璃色の目は男たちをまっすぐに見つめていた。 「お前…ふざけんなよっっ!!」 ついにしびれを切らした男の1人がそう叫びながら少女になぐりかかるとそれに続いて男たちもなぐりかかる。ほかの客たちが、見てられないというように、目を覆う中、1人の少年だけは、少女の姿を見つめていた。 「あーあ…めんどくさ」 四方八方から伸びてくる手を華麗によけながら出口へと近づいていく少女の後ろでぐっと唇をかんだ男が、なにやら後ろから他国の武器と思われるものを取り出して少女へと切りかかった。そのことに少女は気付かずに、次々と出てくる拳をよけつづけている。 「死ねえええええええええええええええええ!!」 誰もが彼女の死を思ったその瞬間、ガキンッと金属音がした。もちろん彼女がそれを止めたわけではない。先ほどまで他の客とともにいた1人の少年が小剣で男の武器を止めていた。その姿に、呆然としている、男たちをよそに、少女はすっとにげだし、扉を開けながら 「あ! マスター! 代金はその男たちからもらってね!」 その少女の言葉を皮切りに男たちはほかの客たちによってとらえられ、いつも通りのバーに戻る。そんな喧噪のなかで少年は立ち尽くしていた。 「クソッ…」 そんな少年は誰にも気づかれず、出ていった。
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