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相手がわかっているだけに、どうしても返事が できない。
振り返りたくない。
できる事なら、このまま気づかないふり を………。
願い虚しく。
「知り合いじゃないの?雫ちゃん」
斗真君に言われたら、聞こえないふりもできな くて。
「り、鈴ちゃん。ど、どうしたの?」
仕方なく返事をすれば、返ってきたのがこの言 葉。
「やっぱりここだったか。慌てて逃げ出したか ら怪しいと思ってね。へへっ……。後つけたし」
ガーンと頭の中で鐘が鳴り響く。
まさか付けられていたなんて……。
ちゃんと確認したはず。後ろには誰もいなかったはずなのに。
―――うそでしょ~
ショックを隠しきれない私は固まった。
鈴ちゃんの事だ、顔を見たら満足して帰る、な んて事は絶対に有り得ない。
「はじめまして。あたしは雫の親友で月島鈴て 言います。あっ、ここいいですか?」
ほら、やっぱり。
案の定、鈴ちゃんは図々しくも私達の向かい側 の椅子を引き、斗真君の返事を確認する前に腰 を下ろしてしまう。
更には……。
「最近、雫が付き合い悪いと思ったら、こうい う事だったんですね~。で?お2人は付き合っ てるんですか?」
こんな爆弾発言まで。
―――もう~ 穴があったら入りたいよ。
私の気持ちがバレたかもしれないと思うと、俯 いた顔を上げれず、ずっと膝を見つめたまま。
そんな私に、信じられない言葉が落とされた。
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