きっかけは1冊の本

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きっかけは1冊の本

「雫~。カラオケ行かない?」 2年に進級して半月。4月の暖かい日の放課後。 校門を出た所で、不意に肩を叩かれて。 「…あっ…-」 私は抱えていた鞄を落としてしまう。 「もう~相変わらずドジなんだから。ほらっ」 そう言って馬鹿にしながら、鞄を拾ってくれ て、パンパンと汚れまで払ってくれる彼女。 名前は月島鈴(つきしまりん) 中学からの私の親友。 「鈴ちゃん、ありがと」 私は鞄を受け取って、また目的の場所へ向かっ て歩き出した。 「あっ、ちょっと雫。カラオケは?ナッチ達も 先行ってるよ」 後ろで叫ぶ鈴ちゃんに振り返り。 「ごめん。どうしても昨日の続きが気になるの」 答えるとまた、踵を返して歩き出す。 「も~また読書?友達無くすよ?今度は絶対来 なさいね」 そんな鈴ちゃんの声を背中に、手だけ振って足 を早めた。 数日前、何気に寄った図書館で、たまたま読んだ小説 に、私はすっかり夢中になってしまった。 それはシリーズ物で全5巻。 もう、続きが気になって気になって仕方ない。 ―――あ~早く読みたい。あの後、主人公はどうなるんだろ? 図書館に入ると、真っすぐその本の棚に向かっ た。
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