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「雫~帰ろ」
鈴ちゃんが鞄片手に私の席に向かってくる。
「ごめん。今日はちょっと用事があって、私急 いでるの。また明日ね。バイバイ」
慌てた私は鞄を抱えて、ダッシュで教室を飛び 出した。
あれから1ヶ月半。毎週木曜日に斗真君と会っている。
そして今日が、その木曜日。
これは鈴ちゃんには秘密。
もし話したりしたら鈴ちゃんの事だもの。
『あたしも行く。斗真君とやらの顔を見てみた いし』
なんて絶対ついて来るに決まってるんだから。
周に1度の大切な時間だもの、邪魔されたら堪 らない。
「…はぁ……はぁ……」
校門を出てから数十メートル、全力で走った。
後ろを振り返り、誰もついて来ていない事を確 かめて立ち止まる。
「ここまで来れば大丈夫。はぁ……、息が苦し い」
膝に手をつき乱れた呼吸を落ち着かせ、気を取 り直して図書館に向かう。
入口から中を覗くと、いつもの場所に斗真君が 座っていた。
―――あっ、いたいた やっぱり今日もかっこいいな。
頬を緩めて見つめる先に、真剣に読書をしてい る斗真君の横顔がある。
胸はドキドキ、心はウキウキ、自然と速くなる 足はピタッ。
斗真君の真横で止まった。
「あっ、雫ちゃん。待ってたよ」
気づいた斗真君が私を見上げる。
この瞬間が好き。
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