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「ねぇ、雫ちゃん。この本、読んだ事ある?」
「いえ、ないです」
「なら読んでみなよ。絶対に面白いから」
「はい。じゃあ今度読んでみます」
今愛読中の本を私に進めて、またページに集中 する斗真君の指先を見つめながらボンヤリと考 える。
―――斗真君はどうして木曜しか来ないんだろう。大学が忙しいんだよね 。うん、きっとそうだ。
そして勝手に理由を考えて自分を納得させる。
本当は知りたい、聞きたい。
だけど、余計な詮索をして嫌われたくない。
好きになればなる程、どんどん臆病になってし まう。
私の事、どう思ってるのかな? 彼女はいるのかな?
気になるのに確かめられないもどかしさ。
「雫ちゃん、どうしたの?」
気づけば斗真君に顔を覗き込まれていた。
―――ち、近い……です。
見つめられただけでドキドキして、クラクラし て倒れてしまいそう。
「べ、別に。何も……」
「そ?顔赤いけど、熱がある訳じゃないよね?」
「熱なんて、全然。いたって平熱ですよ」
「くっ…。ほんと雫ちゃんて可愛いね」
可愛いと言われた瞬間、私の体は恥ずかしさで一気に熱を帯びて、ドキ ドキが加速した。
…と、その時。
「し‥‥ず‥‥く」
聞き覚えのある声に、別の意味でドキリとさせられる。
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