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「……キミは差別を、虐げるものばかりだと思っているようだが、優遇することだって差別だ。言い方を変えれば贔屓になる。していることは真逆だとしても、本質は差別だ。差をつけ分けて考えているのだから」
サキュバスさんは興味深そうに、うんうんと頷きながら聞いている。その真摯な瞳がなんだか気恥ずかしい。
「……だから、もし、キミが勝ち残り、差別を無くしてしまったら、この世界は一辺倒で味気ない、個人の意味が無くなってしまった世界になるだろう。だから、願うならせめて違うものにしたほうが良い。と、僕は思う……」
最後の方は尻すぼみになってしまった。自分の言うことに自信を持つことは簡単ではない。
説得力のない僕の言い分を聞いたサキュバスさんはというと、
「……なるほどのう、確かに、一理ある」
妙に神妙な顔で頷いている。そんなに真に受けなくてもいいものを。
「そうじゃのう、貴様の言うとおりじゃ。差別撤廃はやめにしよう。代わりに、そうじゃのう……。我が国民に、我が僧侶であることを心から認めさせるとかかのう。これなら大丈夫か!?」
「え、あ、た、たぶん大丈夫かと……」
「そうか、なら我の願いはこれに変更じゃ」
別に何でもいいけれど。というか何で一回僕に伺いを立てたんだ。責任は持てないぞ。
サキュバスさんはどこか清々しそうに伸びをして、
「んー……、ククク、さて、それではのう、我らの連合名についてだが」
「そんなことは一度も話題に出ていない」
「!?」
「何を驚いている。一番驚いたのは僕だ」
「冷静そのものではないか……」
「僕は見た目に出ないだけだ」
良く言えばポーカーフェイス。悪く言えば仏頂面。突き詰めれば何を考えてるか分からないやつ。今まで何一つプラスに働いたことなどないけれど。
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