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「なんじゃその顔。悪だくみか?」
喜んでいるんだ。
しかし、それを伝える気はないので黙っておく。列が進んでいるな、僕はこの列に並ぶのに大忙しだ。声を発することすらままならない。
「おいおい、ナミヒトよ。無視はあまりにつれないではないか。我の鉄拳が唸りを上げたがっておるぞ。ん?」
「……暴力反対」
「ナミヒトが我を謀るのが悪い」
騙される方が悪い。
サキュバスさんは僕の後ろに並び、僕の肩を掴んでグラグラ揺らしながら、
「なーなーナミヒトよ。何故そんなに冷たいんじゃー。カルシウムが足りておらんぞー」
「……なら朝食は魚だな」
「おお、それはいいのう。我は肉の方が好きじゃがな!」
「……僕は魚の方が好きだ。特に生がいい」
「我も生肉が好きじゃのー」
「……いや、そんなことは言っていないから……。魚の話だから……」
「特にレバーがいいのー。心臓もいいのー。胸もいいのー」
「…………人間のじゃないだろうな……?」
「そんなわけなかろう。牛とかの家畜じゃ。いやぁ、あれじゃの。この世界に来て一番嬉しかったのは食べるものが美味しいということじゃ。しかもいちいち捕まえんでも売っておるしの。便利な世界じゃ」
どうやらサキュバスさんのいた世界は、科学文明はあまり発達していなかったようだ。まぁ、その代わりに魔法やらがあるのだろうが。
雑談をしていると、順番が回ってきた。僕は鯖の味噌煮定食の食券を購入する。
サキュバスさんは、
「ん、ん? えっと……、お金入れて、あっと……あれ? この紙のってどこ入れるのじゃ……?」
かなり初手の手順から苦労していた。
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