「嬉々迫る不幸自慢」

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「そうじゃ。あ、あとのう、こ、この、木の棒はどう使うんじゃ? 手本を見せてくれんと使い方が分からん……」 サキュバスさんがオロオロしながらこちらを見ている。どうやらこちらの世界に慣れていないというのは本当らしい。 僕は魚の身を割り箸で摘み口に入れる。そしてサキュバスさんを見る。 サキュバスさんは一つ頷き、割り箸で焼肉を摘もうとする。するが、手がプルプル震えて上手く摘めないようだ。 サキュバスさんは一分ほど割り箸と格闘するのを眺めながら、箸を進めていると、 「―――ゥガア! なんじゃこの七面倒なのは! フォーク! フォークはないのかおのれぇ!」 「……フォークなら、こっちの箱に入っているが……」 「こっちで食べる! これは難しすぎじゃ!」 繊細なことが出来ない王女様は、プンスカ怒りながら箸を置き、フォークを手に取る。そしてフォークで肉を突き刺して食べ始めた。 「はぐっ、むぐ……。んんー……。美味しいのぉ……」 怒っていた顔はすぐに蕩けるような笑みに変わった。見ているこっちの顔が疲れてくる。
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