「嬉々迫る不幸自慢」

31/33
410人が本棚に入れています
本棚に追加
/109ページ
そんな、僕が心配したところでどうにもならないことを心配しながら聞いてみると、 「んぐんが……、ごきゅ。ぷはぁ! 美味しい! 知らん!」 「食べるついでに答えるな、分かりにくい……」 「美味しいから仕方なかろう。そして、その話じゃがな、確かに五年前に異世界民の大量移動が起きた。それは我も知っておる。しかし、我はその時にこっちには来ておらんのじゃ」 バクバク肉を頬張りながらサキュバスさんは続ける。 「そもそも、あの異世界民大移動は今も起こそうとすれば起きるものじゃ。未だに魔界は次元の壁が不安定でのう。ちょっと覗いてみたらすぐにこっちに来れるくらいの敷居の狭さじゃ」 なんだその、ちょっと気になる店を覗いてみたかのような気安さは。 「いや、おそらく、魔界だけではなく、ほとんどの異世界は次元の壁が不安定じゃ。正直、これは世界の一大事なんじゃぞ? 普通こうなったら、世界が融合してしまってもおかしくない。というか、しないとおかしいレベルじゃ」 「……でも、していないじゃないか」 「理由は知らん。そして次元の壁が一度に大激震した理屈も分からん。そんなこと、神でもなければ出来そうにないと思うのじゃがのう……」 神。という言葉を聞いて、僕は五年前のテレビの映像を思い出した。 『神は俺が殺した』 ……いつか話す機会があれば、聞いてみよう。
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!