「嬉々迫る不幸自慢」

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「それでじゃ。我は外の世界、というか、この世界。人間界が知りたくてのう。それでこっちに来てみたのじゃ。まぁ、平たくいえば留学じゃの」 留学で世界を超えてしまわれたんですか、あなたは。 なんだか馬鹿らしくなってきたので、彼女の話にとりあえずリアクションしておく。 「……なんで人間界に興味を?」 「聞きたいのか!? 聞きたいのか!? なら教えてやろう! 心して聞くといい!」 何度目かも定かではないが、考えずに話すことに対して反省をする。ぐいぐい来られると引きたくなる。 僕の嫌そうな顔など見ていないサキュバスさんは、興奮したように息巻いて、 「実はのう、我の家系には、一人異端者がおったのじゃ。人間と恋をし、王座を捨て、人間界に移り住んだという者が! 子供の頃、城におったときに、その者の日記を発見してのう。なんという、アンビバレンスな恋の物語! まさに純愛であった!」 アンビバレンスは相反する気持ちを持つと言う意味なんだが。純愛じゃなかったのか? 「それを見て、我は決意したのじゃ! 節操なく淫らに股を開くのではなく、このように誰か一人に恋をし、誠実に愛を育む。これこそが生き物の真なる生き方と! そして癒し系が女の子っぽいと! だから我は僧侶になったのじゃ」 サキュバスさんはとてつもなく軽い理由で僧侶になっていた。聖職者を何だと思っているのだろうか。
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