「嬉々迫る不幸自慢」

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「そして、我は僧侶としてレベルアップを重ね、ついに満を持してこの世界にやってきたのじゃ! そして色々放浪しておるところに……。おい、聞いておるのか?」 「ああ、聞いている聞いている」 「……いい天気じゃのう」 「ああ、聞いている聞いている」 「聞いておらんではないか!」 「ぶふぅ」 サキュバスさんにデコピンをされる。小石を投げつけられたような痛みがするぞ。昔を思い出す。 僕は額を擦りながら、最後の一口を租借し飲み下し、 「ご馳走様でした」 「ぬ、もう食べたのか。我もすぐに食べるから、少し待つがよ」 「それじゃあクロエ。また教室で」 「待てと言うておろうが! あ、こら待て、置いてくな―――!」 僕はサキュバスさんを置いてそそくさとその場を後にした。サキュバスさんは声が大きいから、いつまでもあそこにいるのは視線が痛すぎる。 そんな自分の心のか弱さに苦笑を漏らし、僕は幾億目の自己嫌悪を感じた。 「……あ」 自己嫌悪の中、僕は思い出した。 「…………さっき、クロエと呼んだな……」 ただ、それだけなのだが。サラリと名前を呼んだだけなのだが。なんだか、何かを成し遂げたような気がして。 今までの中で数えるほどの、自己賛美を感じた。 ――― ――――――
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