言葉で傷つけて、愛に傷ついて

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思っていることを口にするのは意外と難しくて。 「好き」とか。 「愛してる」とか。 言いたいことは山ほどあっても。 それのどれ一つとして、君にあげられなかった。 自分の部屋が、まるで違う空間に見えた。 それほどこの一瞬、一瞬が俺にとって意味を持ちすぎた。 西に傾いた夕日の紅に、君の涙だけ反射した。 「さよなら…しよう?」 ポツリ、と放った言葉が、どれだけ重いものか。 俺は頷けないまま、君の口から止めどもない別れ話が零れた。 やっぱり性格が合わないよね、とか。 あなたにはもっと綺麗な人が似合うよ、とか。 俺にとってなんの意味も持たない理由だけが、そこら中に散らばった。 俺は… 性格の合うヤツを好きになったんじゃない。 人目を引くような美人を好きになったんじゃない。 そのままの君を、 笑顔が似合う君を、好きになったんだ… 「あたしの言いたいことは、これで終わり」 だから、全ても終わりなんだよ。 俺にはそう聞こえたような気がした。 何度好きだと思ったか分からない。 けど、 何度言葉で傷つけたのかも、分からなかった。 本当の気持ちをいつまでも心の奥にしまったまま。 愛してる、と口にするのも怖いくらいに求めていて。 だからこそ、自分を守るために傷つけた。 冷たい言葉ばかりを吐いた。 その報いが、これなんだな… “最後”なんて数えたくなかった。 「…お前がそうしたいなら、そうすればいいよ」 酷な言葉を放った。 一瞬、悲しそうに顔を歪めたけど「そっか」って君は笑う。 …なんで笑う? 君も俺に酷い言葉を投げつければいい。 アンタなんか大嫌いだと、一生恨めばいい。 好きすぎて、傷つけることしか出来なかった俺に… そんな悲しそうな笑顔なんて残さないで… 出来るだけ平静を装って、窓の外を見る。 カチャン、とドアが閉まったのはそのすぐ後だった。 「阿呆だな…」 ゆっくりと頬を伝うのは冷たい雫。 どんなに言葉を重ねても、想いを馳せても。 君は二度と戻らないから。 愛した分だけ傷つけたのは俺だった。 けど… その愛の分だけ傷ついたのもまた 俺だった… 言葉で傷つけて、    愛に傷ついて (ただ君が好きだった)
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