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体の痛みで目が覚めてしまった。まだ眠いが、硬い地面で寝ていたことによる痛みが体の節々に残っていて、そのまま眠れそうにはない。まどろみに後ろ髪を引かれながらも、しょうがなく目を開き、身体をおこした。周囲を見渡すが、薄明かりもない暗闇で、自分の体すら見えない。
ここどこだよ。てか、なんでこんなとこで俺寝てんだ・・・
そのまま呆然と考えているうちにようやく気づいた。
何一つ思い出せない。
寝る前何してた?酒でも飲んだのか?
いや、そもそも自分の名前は?家族は?
・・・だめだ。何も思い出せん。
何も覚えていないためか、かえって取り乱すことはなかったが、それでも不安から周りの状況を確かめることにする。目が慣れることもない暗闇の中、ゆっくりと立ち上がり、中腰になりながら周囲を手探りで確認していく。
小さな部屋みたいだな。天井は届かないからわからんけど。
なんにも、というかドアすらないっていうのはどういうこと?どっから入ったんだ俺。
どこか見逃しただけなのか?
その後も何度も同じところを重ね重ね確認していく。周囲は同じ材質でできた壁、床で囲まれてた部屋のようだった。さわるとつるつるしている。ただそこにはやはり何も見当たらない。届かない高さにあるならばわからないが、這いつくばって確かめても床にも何も見つからなかった。解決の糸口すら見つけなられないという状況を把握するに従って、それまでは抑えられていた不安やストレスを呼び起こされていく。
「なんなんだよここ。誰でもいいから説明しろや!!」
「サー。ここはマスターのダンジョン初期の部屋です。現在の広さは一辺5Mの立方体。マスター権限による加工などは未実地です。」
「・・・え?」
これが、ダンジョンマスターとしての最初の命令に対する応答だった。
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