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長い沈黙が続きました。一分が何時間にでも感じられる、重苦しい空気。
「…あなた、だれ?」
彼女は質問を繰り返します。
「僕は…ここの墓を守っている。君は雨の中、墓地で倒れていたんだ。…覚えてる?」
「…墓守さんなの?」
―『ハカモリ』。僕は生まれて初めて、名前を与えられたような心地になりました。
僕の夢のような心地を、警戒している彼女に見せてはいけないと、平静を装いましたが。
「…僕の名前は、…ハカモリ。君は?」
「沙織です。ご迷惑をおかけました。」
彼女-沙織さんと、嘘混じりの自己紹介が済んだ後、
僕の管轄区域の墓地から、キイイ、キイイと、叫び声が聞こえてきました。
話をしている暇は無い。僕は、沙織さんをそのまま勤め場に残し、慌てて叫び声のする区域に入りました。
近づくたびに、キイイ、キイイと、墓地に響く叫び声が大きくなります。
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