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政府は民間向けに技術採用局なる事務局を新設した。そこは、民間企業、もしくは個人が開発した物を直接、審査する場であり、社会に有益をもたらすと判断された場合、政府が援助金を出し世間に普及させることを目的としていた。
ただし、その分、審査は大変厳しく厳正で、技術採用局が設立してから一年が経ったが、未だ世間に流通した物はなかった。
今日も、事務局にはいくつもの企業や技術者が自信満々に訪れるも、どれも不採用で終わった。
「次の方、どうぞ」
職員に促され、その日、最後の審査対象者がやってきた。科学者であるP博士は、大事そうにテレビを一台、運び入れると、局長の前に置いた。
「これが、あなたの発明ですか?」
「はい。妄想コンピューターです」
「妄想コンピューター?」
「一般向けに私が銘々した名前です。正式名称は思考読み取り式全自動電子演算機です」
「ずいぶんと、長い名前ですな」
「正式名称は長いので、妄想コンピューターという分かりやすい名前にしたのです」
「しかし、コンピューターが普及していない時代なら、まだしも・・・。何か、目新しい機能でも備え付けられているのですか?」
「いえ。基本的には、一般に流通しているコンピューターと同じです。OSも普通です。変に奇をてらっては、世間はなかなか、受け入れてくれませんから。ただ、このコンピューターは一つだけ、他とは違う点があります」
P博士はそう言うと、頭に取り付けるヘッドバンドのような物を持ち出した。
「このコンピューターには、キードードのような入力装置がついていません。私は、入力装置として、このバンドを開発したのです」
「具体的には、どのような方法で入力をするのですか?」
「ごらんください」
P博士はヘッドバンドを頭に巻き付けるた。すると、コンピューターは自動的に起動しだした。それから、P博士は局長が見ている前で、コンピューターに一切、触れることなく操作を実演してみせた。
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