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今から遡ること八十年。
グリトニア大国のとある学者が世界に幻素の存在を発表。
幻素は、酸素や水素と同じく空気中に漂う物質である。
呼吸により体内へと送り込まれ、全身に澄みわたる性質を持っている。
あくまでも“全身”は幻素をため込む袋であり、体内で反応を示すとすれば脳以外あり得ない。
取り込んだ幻素は、脳に眠る強い記憶と混ざりあい、それが外に放出された時に不可思議な現象を生み出す。
現在、延べ十二万八千もの特赦な現象が確認、記録されている。
中から代表的なものを挙げると、自然現象を意図的に、そして非化学的に発生させるものだろう。
ただ、指紋が誰しも異なる様に、記憶にも必ず細かな違いがあり、例えばそれは色であったり質量であったり、暖かかったり冷たかったりと性質も様々。
ただ、誰もが現象を行使できる訳では無く、強い記憶を鮮明に想像すること、幻素によって特別な現象が引き起こせることの自覚。
最低でもこの二つが条件とされている。
今では、西の機械都市で研究者たちが造り出した記憶の固定化装置の存在もあり、多くの人間が現象の行使に成功。
かつて、神の所業と称えられた現象は、化学の力により非凡な者にすら与えられたのだ。
永い研究の末、まだ現象に対する謎は多いが、人類は確実な進化を遂げる。
そして、人は記憶と想像が生んだ未知の現象を魔法と呼んだ。
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