一章 転入生

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     目を開けると水気を含んだように黒ずんだ、木製の天井が。  次いで、中央でぐるぐると無愛想に回り続ける羽根つきの灯りに、朝日を中継する窓ガラスなど、様々な情報が思考に刺激を与えていく。 「……夢か」  随分と古い記憶が引っ張り出されたものだと、未だに慣れない木の匂いに鼻をひくつかせながら、軽く微笑んだ。  今の今まで体を委ねていた堅いベッドの上を離れて、洗面所へと向かう。  距離にして三メートル。部屋が狭いと便利な事もあるのだ。  コップに突っ込まれた歯ブラシを口に加え、壁に掛けられていた黒い制服を羽織る。  ワイシャツを着たまま寝るというスタイルは、朝の準備時間を短縮するのだ。  歯を磨き終えれば、顔を洗って準備完了。少年は部屋を後にする。 「おっはよー!」 「うるせぇ」  扉を開けた瞬間に、待ち構えていた何者かが挨拶してくるも一蹴。 「ひどッ! せっかく女子高生様が一緒に登校してあげようと思ってるのに」 「レナ、黙れ」  やかましい女子高生様を、今度は名指しで一蹴。  鮮やかな金色の髪を長く伸ばした女子高生様は、それでも何事も無かったかの如く、少年と肩を並べる。 「はい、じゃあ出発」 「俺、お前のそういうとこ苦手だ」  切実な呟きは、彼女としては冗談としてとらえられていた。  基本的に都合の悪い言葉は、全て聞き流すタイプである。  
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