46人が本棚に入れています
本棚に追加
目を開けると水気を含んだように黒ずんだ、木製の天井が。
次いで、中央でぐるぐると無愛想に回り続ける羽根つきの灯りに、朝日を中継する窓ガラスなど、様々な情報が思考に刺激を与えていく。
「……夢か」
随分と古い記憶が引っ張り出されたものだと、未だに慣れない木の匂いに鼻をひくつかせながら、軽く微笑んだ。
今の今まで体を委ねていた堅いベッドの上を離れて、洗面所へと向かう。
距離にして三メートル。部屋が狭いと便利な事もあるのだ。
コップに突っ込まれた歯ブラシを口に加え、壁に掛けられていた黒い制服を羽織る。
ワイシャツを着たまま寝るというスタイルは、朝の準備時間を短縮するのだ。
歯を磨き終えれば、顔を洗って準備完了。少年は部屋を後にする。
「おっはよー!」
「うるせぇ」
扉を開けた瞬間に、待ち構えていた何者かが挨拶してくるも一蹴。
「ひどッ! せっかく女子高生様が一緒に登校してあげようと思ってるのに」
「レナ、黙れ」
やかましい女子高生様を、今度は名指しで一蹴。
鮮やかな金色の髪を長く伸ばした女子高生様は、それでも何事も無かったかの如く、少年と肩を並べる。
「はい、じゃあ出発」
「俺、お前のそういうとこ苦手だ」
切実な呟きは、彼女としては冗談としてとらえられていた。
基本的に都合の悪い言葉は、全て聞き流すタイプである。
最初のコメントを投稿しよう!