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その表情は、少しだけ悲しげな光を目に宿していた。
そして、笹木は素早く立ち上がり部下の肩を掴み、強く引き寄せた。
「魔族との戦闘でも人との戦闘でも、最初に死ぬのは“他人にかまけてる奴”だ。てめえはもっと自分の事を考えろ」
そう言い終えた頃には、部下の体に無数の穴が空いていた。
笹木は、自分の体を隠すようにして掴んでいた部下の体を乱雑に捨てて、正面を見据えた。
「いきなり散弾銃ぶっ放すたぁ、いい度胸じゃねえの。ああッ!?」
眉間にシワを寄せて、笹木は吠える。
視界に映った、一人の女に対して。
「笹木裕也。年齢三十八。武装部隊、第七部隊長。……和領国出身」
女は小さく呟いた後、手にしていた銃を前方に投げつけた。
銃は、くるくると綺麗な円を描きながら回転して笹木の元へと迫りくる。
(……投げた? なんにせよ……)
「このまま棒立ちで待つ選択肢は無いっつうの!」
銃との距離が十メートルほどにさしかかった辺りで、笹木は大きく飛躍した。
地面から五メートルほどある巨木の幹に足をかけて、下を見下ろす。
足元で銃は爆発し、どっしりと構えた巨木をも大きく揺らした。
舞散る木の葉と草木が火に燃える匂いを感じつつ、笹木は悪態を吐く。
「ちっ、きたねぇ」
銃撃の盾に使った部下の死体から散乱した血液が、爆風に乗って笹木の頬を濡らしていたのだ。
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