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木の枝から地面に着地し、辺りに蔓延する嫌な臭いに目を細めた。
まだ少女は動いていないようだ。
「悪いな盾にして……。こういう残酷さがねえとこの世界で三十八年も生きていけねえんだわ」
体が破片となって飛び散った為、この空間に向けて笹木は謝罪する。
少女から目線を外さないまま、一歩ずつ足を踏み出していく。
「だからまぁ、弔い合戦だ。そんなもんで許してくれや」
笹木の右腕が発光し、淡い光はそこに留まった。
深く息を吐いてから、両足を開き、「ふッ!」という声と共に正拳突きで空を貫いた。
十メートル近く距離を空けていた少女は見計らった様に前方へ飛び出した。
先ほど銃を爆発させたのと同じ様に、遠距離攻撃を予想したのだろう。
「ばぁか、今のはてめぇに行動を起こさせる為の“意味のない”技だよ」
駆け出した少女は、途中で足を止めた。否、止められた。
彼女の足は凍りついている。
「仮にも監視役だ。罠の位置くらい把握してる。そしてお前はこの雨の中での戦闘だ。罠に回す警戒度も、当然下がる」
笹木は、大きく息を吸ってから、ぶちまけるように吐き出した。
それは火炎。
奇術師が吹く炎を五倍ほどの規模にした威力。
木を草を焼きつくしながら、真っ直ぐに進んでいく。
「焦げろ。本当の戦場を知って天国から出直してこい」
氷によって足を地面に縫いつけられた少女は、なす術もなく炎にのみこまれた。
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