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深くため息をつきながら、男に返す。
「いや、あのですね……その『六代目』っての止めてもらえますか?」
「おや? なぜです?」
「私は六代目毒婦マチルダを襲名した訳じゃないから」
男――五代目光姫にキッパリと言い切ると、光姫が困惑したような顔をした。
「最初にこの店に来た時に言ったはずです。私は先代……五代目毒婦マチルダからある物を預かっただけだと」
光姫が苦笑しながら答える。
「うーん……。その『預かる』って言うのが……そもそも六代目の襲名条件をクリアしているような……」
というかですね、と光姫が続ける。
「貴女、先代の毒婦マチルダとはどういう関係なんです?」
……来たか。その質問。
「だいたいですね……毒婦マチルダ。初代の頃から僕らの間では『幻のクリエイター』だったんですよ」
どこか芝居かかったような光姫の口調が店内に響く。
「襲名されているのか居ないのか……。そもそも存在しているのかすら怪しい『幻のクリエイター』だったんです」
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