戻れないワケで

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「ちょっ、リート!たんまたんま!早ぇって!」 俺なんかお構い無しにどんどん加速するリートに根を上げると、怒られたと勘違いしたリートが目に涙を浮かべた。 「あー……泣くな、怒ってねぇから」 本当かと左足を揺さぶるリートにもう一度怒ってないと言い聞かせると、今度は地面を飛び跳ねてはしゃぐ。 「あんまはしゃぐなよ、転けっから」 「ギっ!……キィィイ!!!!」 言った傍から盛大に転けて顔面を強打したリートが泣き喚く。まぁ涙は出ないけど。 あの時はあやすのが大変だったなぁ。  「……俺の森で何をしている?」 そこで出逢ったのが、2メートルはあろうかという長身に、威圧的な鋭い瞳と、気怠い雰囲気が妙に興味を惹く男。 俺の一番の親友であり、師であり、戦友の、リア・クラウスだった。 「あー……オニーサン此処の人?」 俺の質問に僅かに目を瞠り、やがて合点がいった様子で一言、独り言のように呟く。 「異世界人か」 「まあ、そんなトコ」 リアは俺の何が気に入ったのか、自分の城へ招き入れた。そこで歴史書を読み漁り、魔法をひとしきり学び、リアを含む七人の王様と親睦を深め、元の世界へ帰った。 時間感覚にして凡そ2年。当時最強の座に君臨していた七人の王に師を仰いだだから当然といえば当然かもしれないが、2年の間に前線で戦えるだけの技量が身に付いた。 と言っても、炎属性だけだったし、俺は力ある英雄や勇者とは違って、タイプの違うものだったけど。 因みに属性は基本五属性と特殊属性とがあり、基本五属性は炎、水、風、光、闇の5つ、特殊属性は創造、時、音などがある。 またこれは炎、水、風のみに言われるものだが、それぞれに特性があり、炎であれば灰燼(かいじん)、鎮火、炬火(きょか)――篝(かがり)火のこと――の三種類とがある。 灰燼は災害を引き起こし、鎮火は全てを溶かし、炬火はコントロールに長ける。 他もだいたい同じだ。俺は鎮火を特性に持つ。
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