戻れないワケで

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「オー、オオー!」 ボイスチェンジャーを通した野太い男の声に似た声でハイスが呼ぶ。 「はいはい、今行きますよ」 早くしろと急かす様は、さながらどっかに居そうな棟梁のようだ。 ハイスに従うまま暫く走っていると、ドラゴンの爪痕が露わになってきた。どうやら氷龍のようだ。 ある場所を境にして、一面が氷に覆われている。足を取られて中々思うように進めない。 「ガァァアアアッ!!?」 怒りで我を忘れているのと……悲しみ、だろうか。怒りに変わったクチかな。 「ハイス、ちょいとお相手してて。俺はちょっとあのお嬢さんに用があるから」 「オー」 暴れる氷龍の数メートル先に座り込んだ、30代と覚しき女性。氷龍が落ち着くまでの間に、こっちの片を付けるとしますか。 ハイスは俺が動くまでの間、ずっと腕を上げている。多分、敬礼してるつもりなんだろう。 ラジャー、って。 可愛いけど、地面に付くほどの腕の長さだ、支えきれなくて、頭の上にだらしなく乗っている。 敬礼というよりは、何かやらかして、てへってしてるカンジ。 「頼むな」 何がともあれ、ハイスが居てくれるのは心強い。しゃがみ込んで頭を撫で、俺の仕事をしに行く。 彼女に氷の礫が放たれそうなので、急がないと。
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