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「お嬢さん、おいくつ?」
「さ、34です」
驚きつつも答えた彼女は、案の定俺より年下だった。
「ん、歳下?ならいっか」
恐らく独り身ではないだろう。家族写真が落ちてる。他は瓦礫に埋もれてしまったようだけど。
「お嬢さんね、人間ってのは、一人じゃあ生きちゃいけないもんだよ」
突然お説教を始めた俺を訝しげに見上げる彼女の手に拾い上げた写真を握らせて、目線を合わせる。
「アナタお母さんでしょ。じゃ、生きて子供護ってやんなきゃいけないんじゃないのかね、」
諭すように、なるだけ優しい声音で話す。
「違う?」
漸く死の実感が芽生えたのか、堰を切ったように泣き出した彼女の頭を数回撫でる。
あらら、この歳になってまでってなカンジの驚いたカオしちゃって。
「私は……」
「笑いなさいな。そんで、向こうで今にも泣き出しそうなダンナさん、安心させてやんなさい」
もう泣きなさんな、と声を投げ掛けてやると「はい!」明るい声が返ってきた。
「さて、と。後はあの子だけかねぇ」
ハイスが際限なく湧き上がる怒りを懸命に喰らっている。
けど、そろそろキツそうさね。助太刀といきますか。
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