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なぜ、どうして、なぜ……繰り返す疑問に終わりなんてない
百年経ったら必ず迎えに来ると、そういった癖に…!
全て無くなってしまえばいい。何もかも、跡形もなく。
そうして誰か、わたしを殺して。
彼の居ない世界なんて、欲しくないの。
自棄に陥ったわたしの前に、中年の男が立ちはだかる。
どうでもいい、消してしまおう。息吹を放つ。
「来ないねぇ、カレ」
男の言葉に、ピタリと動きが止まる。息吹が空中に分散し、舞う。
そんな筈はない、彼は百年前に死んだ。彼を知っている者など、居る筈が……
「でも、だからって暴れるのは頂けないなぁ」
この男、本当に彼を知っているのか……?そう思わせる口振りで、男はへらりと笑ってみせた。
「お嬢さん、俺にはまだ若いように見えるな」
余裕すら感じさせる男の雰囲気呑まれる。
しかも、わたしの攻撃を全て受け止めていながら無傷。
まだ若輩者とはいえ、わたしも氷龍の端くれ。生身で受けて無傷でいられるほど、龍族の技は弱くない。
「今ならまだ若気の至りで済むし、退いてくれると助かるんだけど」
見れば、氷は全て溶かされ、辺りは水浸し。
ここまで広範囲なのは珍しいけれど、調和の炎。
「おじさんも女のコ相手に戦いたくないしね」
そう言いながら、足元で扇状に炎を広げている。万が一暴れた時の備えか、或いは……。
どちらにせよ、わたしの適う相手ではない。古代魔法は厄介だ。
「俺、今の魔法には疎くってね。これが今、なんて呼ばれてるか、とかさ」
炎系で一番稀少とされる和の炎を操る者は、昔に比べ随分減ったと聞く。
「手荒な事はしたくないなぁ」
これ以上暴れても無駄だと判断し、大人しくその場で静止した。
何より、和の炎にあてられて、怒りが剃がれていた。
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