終話ー闇への誘いー

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歩行者専用信号が赤を示し、人々は一斉に歩みを止める。 数秒、竜輝は弥勒の双眸と線を合わせ、黙りこくる。 「どうするもこうするも…」 そして、再び口を開く。 「俺の目的を邪魔するなら、感情は捨てて殺りますよ。立ちはだかるのが例え家族でも、それが弟でも。」 「…少しは感情を持て、お前は自分を捨て過ぎだ。」 「捨ててなんかいませんよ。」 自嘲気味に竜輝は高く聳えるビル群を見上げる。 「元から“自分”なんて持ってませんから、俺はこの先の未来を守りたい、その為なら俺は命も、肉体も、魂さえも捧げる覚悟スよ。」 「………勝手にしろ。」 聞き飽きたのか、弥勒は青に変わった信号を合図に歩き出す。 「世界は腐り過ぎた。この世を今一度再生するには全てを起源へと戻す必要がある。」 「………。」 竜輝に弥勒は語りかける。 「それは古の預言より決まっている事。全世界の蘇生(リ・アースデイ)、通称【ラグナロク】。」 弥勒はニヤリと笑い、竜輝の頭をワシワシと撫でる。 「お前の闇は俺が受け止めてやる。」 「……弥勒さん。」 「お前の命、俺が預る。」 闇に沈んだ2人とは思えない程の笑顔は、人混みに紛れて行った。 闇への誘いは始まっているーー
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