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翌日、ゆっくりと寝てから家を出て、五月君の言っていたパトリアという店に二人で入る。 この街に来てすぐの頃、ここの店長に会ったが、店の中には入った事のないままだった。 …正直、もっと雑多な店だと思っていました。 綺麗に飾り付けられた店内を見回して思う。 「五月君?」 店内に入るとキョロキョロと辺りを見渡す五月君。 そういえば、知り合いが働いてるんでしたね…。 そんな事を思っていると、少し奥で作業していた、黒髪の少し幼さの残った顔をした可愛らしい店員に嬉しそうに話しかけていた。 歩み寄って、ニコリと笑い挨拶する。 「こんにちは。貴方があんこ君?」 「え?あ、ちが…違いますっ!!」 慌てて否定する彼を不思議に思っていると、あんずなんです!と小さく呟いているのが聞こえて、思わず笑ってしまう。 「…っと、失礼しました。可愛らしい方ですね。あまり五月君と仲が良さそうだったので、少し意地悪しようかと思っていましたが…これだけ可愛らしい方なら仕方ありませんね」 意地悪…と呟きながら少し驚いた顔をして見上げてくるあんず君に、またニコリと笑い、リングを見たいと告げ案内してもらう。 案内してもらったショーケースには、たくさん並ぶアクセサリーの数々。 「こう沢山あると悩みますね…」 ふと目に入った、シンプルなリングを手に取る。 小さな石がはめ込んであるシンプルなもの。琥珀色のその石が、五月君の瞳の色に見えて気になる。 「五月君は、こういうのはダメですか?」
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